古へ




豊玉姫の命


 
黄泉の国の事態に酷似


この段は、山幸の妻となった海神の娘、豊玉姫の出産話である。天つ神の子ゆえ海原で産むべきでないとして、渚に出てきて鵜の羽で産屋を作ろうとしたが、作り終えない間に産気づいてしまう。この時、夫神に、お産の時は元の姿になるので絶対に見ないで欲しいと言うのを、山幸は覗き見て、八尋鰐が這っている有様に驚いて逃げ出してしまい、それを痛く恥じた姫は海坂(海道と地上道の境界)を封じて海に帰ってしまう。

前半の話は、イザナギが黄泉の国のイザナミに国造りが未完成(〓産屋が未完成)なので戻るよう要請した経緯にどこか似ている。また、後半は、イザナミの制止にもかかわらず、どろどろの醜態を覗き見てイザナギが逃げ出す話に似ている。海坂も比良坂(二つの時代の境界)の焼直しのようだ。つまり、二章で述べた「黄泉の国」の段が簡略化されているとみられるわけだ。
 

 
 
 鵜茅草葺合へずの命へ 

Copyright(C)1978-1998   初稿1978.5 


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