古へ




海幸と山幸


 
海洋型経済大国の崩壊


 ここでは、文明逼塞の具体的な原因が示されているようである。
話はお馴染み、釣り針という負債を負わされた山幸(ホオリ)が、水を司る神(シホツチ)の援助で、海幸(ホデリ)を懲らしめるという話である。タイミングの良い司水神の水位の上げ下げで、海幸を貧しくしていき、逆らえば潮満つの玉で溺れさせ、憂えて謝れば潮干るの玉でかろうじて生かしておくという、いわば故意の人為的象徴的水害による海洋部族の没落が語られているとみられる。

これは、今にいう過去の負債(対日貿易赤字など)を逆ネタに、株や通貨の相場(水位)操作、経済制裁が、指向性ある強大な資本力や、水を得た政治力によってなされ、海洋国日本が打撃を受けることを物語っていると解釈される。このことは現在進行中のことであり、一時「ホオリ」の状態にあったアメリカが逆転して力を取り戻しつつある。(記載は1994年以前の情報による。今では、激しい為替の変化による莫大な損失の後、ヘッジファンドを初めとする巨大マネーが指向性を強めて我が国を標的にしている)

彼らは既に世界の金融を手中にし、巨大な資本を自由に操り得るという。穀物と石油の生産流通機構を握り、食料とエネルギーをほぼ支配するらしい。また、強大な政治力、軍事力のアメリカを背景に、世界各国に異議を唱えさせない世界戦略を発動するという。結局、孤立を深めるのは政治、経済などの分野で彼らのスムーズな進出を拒む北朝鮮や日本のような頑なな国ばかりとなる。

いずれ情報も支配され、監理された情報が 世界に提供されるようになれば、神話ではあたかも山幸の方が善玉のように語り継がれるが、それと同様、海幸日本はその巧みな情報戦略で衆議一致の悪玉となってしまいかねない。

そして、資金力に物を言わせた為替相場操作、スーパー301条などの経済制裁、米政府高官の発言シグナルなどは、大小こそあれすべて潮満つ潮干るの玉なのだ。このために、海幸は山幸に頭が上がらず、山幸の昼夜の守り人となってしまうというのが預言とすれば、実際の歴史はどのような展開をしていくのだろうか。

だが、もしこの手の「水位」操作が過激になされた場合には、緩徐な古事記の域を超えて、急激な黙示録にいう大いなる都市バビロン崩壊の序曲ともなりかねない。例えば、一日百兆円にも上る為替相場への投機資金にひとたび指向性が与えられたなら、各国の協調介入や高官発言ごときが寄ってたかったとしても、ひとたまりもない。危ない話はごまんとあるが、それを今は世界の良識がまだしも支えていることと、まだ時が至っていないからという理由によって免れているのだと思えるのである。
 


 豊玉姫の命へ 

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