古へ




木の花の咲くや姫


 
華美な高度物質文明は、結局短命に終わる


この段のあらすじはこうだ。

ニニギの命は、「木の花の咲くや姫」に出会い、求婚する。だが、彼女には姉の「石長姫(イワナガヒメ)」があり、一存では決められないので、父「大山津見」に話してくれと言う。そこでそのようにすると、父神は大いに喜んで「石長姫」も添えて差し出した。ところが、ニニギの命は、醜さのゆえに姉神の方だけを返してしまった。そこで痛く恥じた父神は、姉神を添えて出したわけと共に、呪詛を込めてこのように言った。
すなわち、天神系理念の命は、妹の「木の花の咲くや姫」により華美で鮮やかな繁栄が築かれ、姉の「石長姫」により盤石の寿命の長いものになるはずであったのに、これでは天神の御子の御代は、木の花が開花し散るごとき短命なものに終わるだろう、と。

つまり、華美だけを取り、堅実を取らぬ発展は、長続きしないということを掛けて示しているのである。

さて、娶られた「木の花の咲くや姫」は、たった一晩で子供を妊み産気づいてしまった。それをニニギは、短時間に妊んだ子とは不義の子であり、天神の子ではないのではないかとの疑いを持ち、火をかけて燃焼下で産ませて真贋を占おうとする。

これも非常に暗示的な話であり、短時間に作ってしまえる子供とは、急発展する現代文明を示していると言える。

この時生まれた神々、ホデリ(火の勢い良い燃焼)、ホスセリ(火勢の衰え)、ホオリ(鎮火)の三神に掛けて何を表そうとしているか、現在の日本の状態を考えればおよそ見当がつかないだろうか。「火」は現文明の象徴であり、高度経済成長、科学技術の急速な進歩、華美な物質文化の謳歌、これらが勢いをなくし、ついに逼塞する時が来ると解釈されるのだ。

だから、今の高度物質文明社会に、あまり惚れ込まないことをお薦めしたい。鳥瞰すれば、今の人類の営みは、自然界のルールに則らない、自分たちだけでしているゲームの世界にすぎないと言える。

何かに突き動かされて、お金稼ぎに狂奔するあなた。昼も夜も満足に休めないあなた。わずかな所有のゆえに死ぬまで働き続けねばならぬあなた、黙示録も獣によって印を受けた偶像崇拝者たちは火と硫黄の燃える池で責め苛まれ、昼も夜も休みがないと言っている。
[ 獣=現世界体制、印=構成員としての登録、偶像=金銀銅石木でできた崇拝物=お金その他の所有物、燃える池=(石油)燃焼を主体とした(車)社会 ]
かといって、未踏の島に住むことも、戸籍(印)をなくすことも(獣が売り買いできなくさせるので)できないあなた、心だけは物事に対して淡泊でいたいものだ。いずれゲームオーバーになると、これまた聖書や古事記には言明されているからである。だからといって、ゲームを心底楽しんでいる方には、難多くとも個々の進化の道であろうから、あえて何も言うことはない。

 

 海幸と山幸へ 

Copyright(C)1978-1998   初稿1978.5 


古事記一覧表に戻る




−Copyright(c)2001- Okuhito all rights reserved−