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穀物の種


遺産を持ち越した者にまつわる伝承

  
 
     これはノアやシュメールのウトゥの事績を語るかのような
    知識の持ち越し者の存在した話である。
    スサノヲは追放された後、オホゲツヒメの神に食物を乞お
    うとした。オホゲツヒメは鼻、口、尻から種々の美味しい
    ものを取り出して料理を作り差し出すと、その振る舞いを
    見ていたスサノヲは、汚いものを差し出したと思い、オオ
    ゲツヒメを斬り殺してしまった。だが殺された体からは穀
    類が生い出でた。頭には蚕、両目に稲種、両耳に粟、鼻に
    小豆、陰部に麦、尻に大豆が。そこで神産巣日御祖命がこ
    れを惜しんで取り、種にしたという。
    この種が次の年に播かれることが暗黙の了解となっている。
    
    稲、粟などの五穀は、大過去の物質文明の生産物、技術成
    果の象徴である。それらの生産物は、現代をみても分かる
    ように、多様で面白いものである反面、汚いものであった
    ため、大変災(乱暴な大地の摂理)がこれを抹殺する
    結果となった。しかし、それでは余りに勿体ないため、隠
    れた知識者が過去の知識を取りまとめて、次の時代に文明
    の種子として持ち越したという解釈となる。伝承のウトゥ、
    オアンネス(シュメール人に文字、法律、幾何学、都市造
    りなどを教えた)、エジプトのトゥト、あるいはノアがそ
    れであった。この知識は新しい時代の当初は万民の所有す
    るところであった。ところが、神の方針転換により封印さ
    れ、現代に至るまで解かれたことはない。ただし、一部の
    者には、神のエージェントになることの引き換えに付与さ
    れたもようである。彼らは神の計画に従って、その中から
    時に応じて必要なヒントを人々に流出させた。現代の爆発
    的な文明の有様もそうやって演出されたとみられる。

 
  
 
 

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