海の日に寄せて

           




ちょうめんころばん・・・・・海の音信


ちょんちょん ちょんちょん 竿の先

ちょうめんころばんと 誰かが言った

子供のてのひらサイズの菱形の

端っこについた 小さなお口

陸のものよ 静かな海も生きているよと

海の便りのモールス信号

ほどなく音信がやむと

またいちど いのち恋しくて

針に餌つけ ぽとりと落とす







海の父


磯を巡りて 幾十里

八尺五寸の 手漕ぎ舟

海のもののふ わが父の

若き血潮は 今いずこ


海に潜れば 勘たけて

幸を集めし 腰のびく

妻子に食わそと うちいでし

まなこの輝き すでになく


偉丈の父の 楽しみは

いつしか陸に 移りける

翳みまなこを またたかせ

車外の景色 愛でること


父の姿は 今はなく

時折訪る 夢枕

浜辺のテレビに 映るぞと

報せは空し 化御霊


我も父の 子なるらん

舟に乗らねど 道を駆る

車に乗りて 旅客する

陸部の漁師 ここにあり









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