峰 桜

              詩歌 奥人






思う人ありて見る峰桜


緑と薄茶のじゅうたんに

自然のなせる明かき主張

旅する人に色香を楽しませむとてか

風に春色の髪さざめかすなり


愛(め)で歩み寄る吟遊酔漢

そをひとりじめにせむとて

つやしい幹肌に頬をすりよせ

ため息ひとつ

やおら下枝の色濃きを手折り

懐にさし帰りぬ

人せつなくもなれるなり


花ささらぐころ

また愛できたる吟遊酔漢

乙女の魅惑とどめんと

写真に撮りて懐に持つ

人やさしくもなれるなり


ああ春色の峰桜

その気高きかんばせに

その匂い立つ樹脂香に

酔漢虜囚となれるなり






応答恋歌集




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